リモートかオフィスか?
出社させたい組織の本音は?
今、多くの企業がリモートワークから出社回帰への移行を検討しています。しかし、「出社回帰」とは、単なる物理的な出社だけを意味せず、働き方や労働文化全体に影響を与えます。今回は、オフィス復帰に対する従業員の本音や、企業がどのような意図でオフィス復帰を推奨しているのかを探ります。
オフィス復帰の現状と課題
今、オフィス復帰を巡る議論は、日本だけでなく世界中で活発化しています。Jones Lang LaSalle (JLL) の調査によると、多くの企業がオフィス復帰を進める際、従業員のニーズにどのように応えるか、柔軟な運用が課題です。
オフィス勤務とリモートワークのハイブリッドな働き方が続けられてきた中、企業が従業員に対してオフィス復帰を促すのには、いくつかの理由が挙げられます。
一つは、生産性やコラボレーションの向上です。多くの企業がリモートワーク中に感じた課題として、従業員同士のコミュニケーションやチームとしての一体感の欠如が挙げられています。これに対し、オフィスは直接的な対話やスムーズな意思疎通を促進し、従業員が効率的に業務を進める場として期待されています。
でも、オフィスに戻ることが本当に従業員の幸福や生産性に寄与するのかという疑問もあります。東京新聞の記事では、日本の労働環境において、長時間労働や精神的ストレスが依然として問題視されており、オフィス復帰によってこうした課題が再び浮き彫りになる可能性が指摘されています 。一部の企業や従業員にとって、リモートワークがもたらす柔軟性や、通勤時間の削減によるストレス軽減は大きなメリットとなっており、オフィス復帰がそのメリットを損なう恐れもあります。
企業の視点
なぜオフィス復帰を推奨するのか?
元々、日本ではリモートワークが完全には浸透しにくかったという文化的背景もあります。東京新聞の記事は、日本の企業文化が「オフィスにいること」を重視する傾向があることを指摘しており、リモートワークに対する理解や導入が遅れてきたといいます 。そのため、企業側にはオフィスに戻ることで従業員のパフォーマンスを最適化し、業務の効率化を図りたいという意図があると考えられます。
また、多くの企業がオフィス復帰を推進している一方で、その背景には単なる文化背景だけでなく、より戦略的な理由も存在します。たとえばイトーキ の考察では、オフィスは、従来の意味での「仕事を共同で進める場」では十分ではなく、従業員個人が集中したり、個人がリフレッシュできる場が求められるなど、従業員一人ひとりのウェルビーイングや生産性を最大限に引き出すための仕事にまつわる「環境」として再定義しています。つまり、オフィスは単なる作業場所ではなく、従業員の健康やモチベーションに直接影響を与える空間として見直されています ー端的に言えば、他人とのコミュニケーション以外や労務管理という企業側の目線ではなく、従業員が出社することの具体的な便益をオフィス作りに反映することが、最終的には企業の成長につながると言えるでしょう。
デジタル技術とスマートオフィスの普及
オフィス勤務の利点を生かすには、テクノロジーの導入が不可欠です。AIやIoTを活用したスマートオフィスの普及が進めば、オフィスの運営は効率化されます。つまり会議室の予約や空調の調整、業務の進行管理など、多くの業務がデジタル化され、従業員がよりクリエイティブな作業に集中できる環境が理想です。さらに、IoTセンサーを活用してオフィスの利用状況をリアルタイムで把握することで、従業員の働き方に合わせたオフィスレイアウトの最適化が可能となり、従業員がより快適に働ける環境を提供できるでしょう。
従業員の視点
1.オフィス復帰への不安と期待
従業員の視点から見ると、オフィス復帰に対してはさまざまな意見があります。一部の従業員は、対面でのコミュニケーションやチームワークの重要性を感じており、オフィスに戻ることで業務が効率的になると考えています。
一方で、リモートワークの自由度や、通勤時間の削減によるストレス軽減を評価する声も根強くあります。リモートワークによって、仕事とプライベートのバランスが取りやすくなり、特に子育て世代や介護を担う従業員にとっては大きな利点となっています。オフィス復帰が進む中で、こうした従業員の多様なニーズにどのように応えるかが、企業にとっての大きな課題となるでしょう。
また、東京新聞の記事が指摘するように、オフィス勤務に戻ることで再び長時間労働が常態化するリスクも懸念されています 。リモートワークの柔軟性を失い、再び厳しい労働環境に戻ることへの不安を感じる従業員も少なくありません。