Loading...

【前編】デジタル時代を切り拓くクリエイティブリーダー──髙野公寛さんが見据える未来への展望

新しいインタビュー企画では、さまざまなプロフェッショナルがどのようにキャリアを築いてきたのか、そのストーリーをご紹介します。この企画が、読者の皆さんの次の一歩を考えるきっかけになれば嬉しいです。

記念すべき第1回目は、クリエイティブ業界で幅広く活躍する髙野公寛さんにご登場いただきました!

髙野さんは東北新社、PARTY、電通などの名だたる企業で経験を積み、現在はWieden+KennedyのBusiness Directorとして活動しつつ、フリーランスとして多様な働き方をしています東京オリンピック開閉会式のチーフクリエイティブプロデューサーやPARTYにて執行役員を務め、カンヌライオンズをはじめとした数々の受賞歴を持つ髙野さん。その輝かしいキャリアの裏にある挑戦や未来への展望を伺いました。

髙野さんのストーリーは、多くの方に刺激と勇気を与えてくれると思います。

 

キャリアの原点と特別な出会い

クリエイティブ業界との出会い

幼少期から青年期にかけて、髙野さんの人生の中心にあったのは意外にもサッカーでした。「小学校1年生から大学4年生まで、全国でも名の知れた強豪チームでプレーしていました。プロを目指す仲間と切磋琢磨した経験は、僕の人生にとって非常に大きな基盤になっています」と語るように、サッカー一筋の生活が彼の土台を築き上げていたのです。

しかし、大学卒業後にサッカーから離れた際、心にぽっかりと穴が空いたような感覚がありました。その空虚感を埋めたのが、学生時代から興味を持っていた海外の広告キャンペーンやNikeのショートフィルムなどでした。「ワールドカップイヤーに必ず展開されるNikeのCM1998 Brazil at the Airport2002 The Secret Tournamentなど、いつも軽快な音楽から始まり、スター選手が次々登場し共演していく様子をワクワクしながら何度も見ていた記憶があります。『Just Do It』というメッセージは、どこか心に残る言葉でした。いつしか『自分もこんな風に人の心をワクワクさせる仕事がしたい』と思うようになったのが、今思うと最初のきっかけだったかもしれません。」と振り返ります。

 

初めてのステップ:東北新社~PARTYとの出会い

髙野さんがクリエイティブ業界の第一歩を踏み出したのは、広告制作会社・東北新社でした。「ここで広告制作の基礎やプロフェッショナルとしての姿勢を学びました。広告がどのように作られ、クラフトの細部にまでこだわることが作品のクオリティをどれだけ左右するかを知ることができたのは、今でも大切な経験です」と語る彼の言葉からは、クリエイティブへの真摯な姿勢が伺えました。

東北新社で経験を積む中、髙野さんの中に新たな目標が生まれました。それはいままで携わった広告枠を超えた「クリエイティブ領域」への挑戦でした。そのきっかけとなったのが、SOUR 『日々の音色』「映し鏡」や2009年にカンヌライオンフィルム部門での金賞を獲得した『Love Distance』。「どちらも広告の枠を超えたクリエイティブで、”どうやって作ったのだろう”、”このような作品に自分も携わりたい。そして、こういうクリエイティブの方々と一緒に仕事がしたい”と思い始めた頃にPARTYの創設を知りました」と当時のことを語ります。

 

転機となったPARTY面接──「安定」を捨てて挑む覚悟

PARTYとの運命的な出会い

2011年、髙野さんの目に飛び込んできたのは、雑誌『ブルータス』の特集でした。『あたらしい仕事と、僕らの未来。』と題した表紙には、当時のPARTYオフィスの写真が使用され「GoogleやSony、楽天といった大手デジタル企業と肩を並べる存在として紹介されていました。その時に『なんてかっこいい会社なんだ』と思いました」と語る髙野さん。さらに、憧れていたクリエイティブの方々がPARTYの創業メンバーであることを知り、髙野さんの心は一気に動きます。

 

PARTYへの挑戦と覚悟

ブルータス掲載の採用企画を見た髙野さんは、迷わず応募しました。書類選考が通過し、いよいよ迎えた面接の日。「クリエイティブ×デジタルの領域を重視しているPARTYにとって、会話の感触からも面接中に落ちてしまったなと感じました。当時の自分の経験値でいうと、明らかにPARTYのレベルに達していなかったなと思います。」とその時の不安を語ります。

しかし、彼はその不安を乗り越える行動に出ます。面接終了後、去りゆく背中を追いかけ、「アルバイトでもインターンでも構いません。この会社で経験を積ませていただけませんか?」と直接想いを伝えました。その情熱が評価され、試用期間という形でPARTYで働くチャンスを手にします。

PARTYで働き始める条件は、前職から考えると年収が大きく減るものでしたが、それでも髙野さんの決意は揺るぎませんでした。その条件に左右されることなく、自身の成長や可能性を重視し、あえて挑戦の道を選びました。PARTYが求めるスキルセットと自身のスキルセットの違いを理解した上で、それを埋める努力を惜しまないという強い意志がその決断の背景にありました。「当時の僕にとって一番大切なのは『お金』ではなく『時間』でした。この会社での経験が必ず自分を成長させてくれると確信していました」と語ります。

 

「憧れのプロたちと働ける機会は、何よりも価値があると感じていました。年収が減ったとしても、それは“学びへの投資”だと思えたのです」と語る彼の姿には、信念に基づいた強い覚悟がありました。

 

PARTY最初の案件での成功体験──クリエイティブの力を知る

新たな挑戦:デジタルと体験型広告の融合

デジタル領域に関して右も左もわからない髙野さんが初めて手掛けた成功体験のひとつに挙げたのが、Googleとのコラボレーションで実現した「Chrome World Wide Maze」というプロジェクトでした。プロジェクトをさらに特別なものにしたのが、当時髙野さんが憧れていたクリエイティブディレクターとの共演でした。このプロジェクトでは、PC上のWebサイトとスマートフォンを連動させ、スマートフォンをコントローラーとして使いながら、PC上で自動生成された迷路をクリアするという新しい体験型コンテンツを生み出しました。

「『デジタルを広告やコミュニケーションに落とし込む』ということを象徴するキャンペーンだったと思います。このプロジェクトで、デジタル技術を活用してどのように人々の心を動かせるかを初めて実感しました」と語る髙野さん。その挑戦は、デジタル広告の可能性を大きく広げるものでした。

このプロジェクトは世界的にも高く評価され、カンヌライオンズでモバイル部門のゴールドを受賞しました。「カンヌの表彰台に立ったとき、『憧れていた舞台が、環境が変わるだけでこんなにも近いんだ』と強く感じました」と語る髙野さん。その瞬間は、彼にとってキャリアの大きな転機となりました。

 

成功から学んだクリエイティブの可能性

受賞の翌日、PARTYのチームメンバーとしてデイリー冊子の見開きに大きく写真が掲載されているのを見た髙野さん。「『クリエイティブの力があれば、こんなに少人数でも世界と戦えるんだ』と実感しました。このプロジェクトは、僕にクリエイティブの可能性と、その力を信じる重要性を教えてくれた特別な経験です」と語ります。

ー後半へ続くー

髙野さんのお話からは、挑戦を恐れず、自分の道を切り開いていく姿勢がいかに大切か伝わってきました。

後編では、AI時代におけるクリエイティブの未来、そして現在の活動についてさらに深掘りします。髙野さんの未来へのビジョンや熱いメッセージもお届けするので、どうぞお楽しみに!

Cogsは、クリエイティブマインドセットを身につけた人材と、グローバルなキャリア成長の機会をつなげるエグゼクティブ・サーチと人材紹介を専門とするエージェンシーです。

#クリエイティブに生きよう #LiveCreative

2025 Cogs Agency