【前編】クリエイティブ×テクノロジー時代に輝くために——Annie Hoangが語るストーリーテリングとパーソナルブランディング
このインタビューシリーズでは、さまざまな業界で活躍するプロフェッショナルのキャリアストーリーを紹介し、その歩みや経験を深掘りしていきます。彼らのストーリーが、皆さんの次の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
第2回のゲストは、東京を拠点に活動するラーニングデザイナー、教育者、エンプロイヤーブランディングストラテジストのアニー・ホアンさん。
アニーさんは、人々がつながり、学び、成長できる場をつくることに焦点を置き、ビジネスからデザインの世界へとキャリアをシフトさせてきました。現在は、自身の経験を活かして学生たちをメインにコミュニティを広げ、クリエイティブ・テック・デザイン業界でのキャリアサポートをしています。
また、教育プラットフォーム「CREABA(クレアバ)」を立ち上げ、人々が自信を持って夢を追いかけられるようサポートするワークショップや体験型プログラムを提供しています。「Pay it forward(恩送り)」の精神を大切にし、「日常の中にある魔法(magic in the mundane)」を見つけることを信念に、これまで17カ国以上・600人以上の学生やプロフェッショナルにデザイン思考やキャリア開発のワークショップを実施してきました。
キャリアの転機や挑戦を乗り越えながら、自らの道を切り拓いてきたアニーさん。そのストーリーに迫ります!

キャリアの原点と人生を変えた出会い
ボランティアプロジェクトが開いた新たな可能性
高校時代、彼女は内気で、自分に自信を持てずにいた。しかし、母親の勧めで参加したボランティアプロジェクトが、彼女の人生を大きく変えることになる。
このプロジェクトは、慶應義塾大学の学生ボランティアが主導する、ベトナムの学校建設を支援する活動だった。彼女は英語とベトナム語、そして日本語の翻訳を手伝った。
「当時、日本語は週に2回、趣味として勉強していただけで、日本に行くことなんて考えもしませんでした。」
しかし、現地で出会った日本の大学生たちの姿勢が、彼女の価値観を大きく変える。
「彼らはベトナム語が話せないのに、熱心に学ぼうとしていました。例えば、『カップはベトナム語で何て言うの?』『”こんにちは”は?』と、言葉を吸収しようとする姿勢が本当に印象的でした。彼らは毎年2回、継続的に訪れて、私たちの文化を理解しようとしながら支援活動を続けていました。」
日本の学生たちが異国の地で新たな挑戦を続ける姿を見て、彼女の中である思いが芽生える。
「私も彼らのように、新しい環境に飛び込み、未知の世界で経験を積みたいと思うようになりました。」

最初の一歩:ベトナムから日本へ
大分での留学生活と発見
日本へ行く決意を固めたのは、このプロジェクトを通じて出会った人々の影響だった。
「彼らに出会っていなかったら、日本に住むことなんて考えもしなかったと思います。」
2年間の準備期間を経て、彼女は大分県の立命館アジア太平洋大学(APU)に進学する。
「大分での生活はとてもユニークでした。田舎ならではの温泉文化や伝統的な日本の暮らしに触れることができました。一方で、APUは世界中から学生が集まる国際的な環境。100以上の国籍の学生がいて、日本の伝統文化と多様なグローバルコミュニティ、この対比がすごく面白かったです。」
彼女はAPUで経営学を専攻し、組織行動やマーケティングを学ぶ。しかし、次第に「実際にクリエイティブな経験を積みたい」と考えるようになり、インターンシップの機会を探し始めた。
そんな中で出会ったのが、東京のYouTubeメディア企業「Tokyo Creative」だった。もともと彼女は、日本文化を理解するためにこの会社の動画を観ており、「自分もこの活動の一員になりたい」と強く思った。
しかし、最初にコンタクトを取った際、採用枠はなかった。それでも彼女は諦めなかった。
「ダメ元で履歴書を送るように言われたので、送るだけでなく、自分の熱意を伝えるために自己紹介動画も録りました。」
その積極的なアプローチが評価され、彼女はインターンとして採用されることになった。

初めての成功と学び
カナダで出会ったUXデザイン
彼女のキャリアにおける大きな転機となったのは、カナダでの7ヶ月間の交換留学だった。
当初はYouTube動画制作への興味から映画クラブに入りたかったが、大学にはそのクラブがなかった。代わりに、偶然出会ったのが「UX(ユーザーエクスペリエンス)クラブ」だった。
「UXが何かも知らなかったけど、日本人のクラブ代表が『試しに参加してみたら?』と誘ってくれて。最初のミーティングで完全に魅了されました。アイデア出しやワイヤーフレーム作成を通じて、面白いものを作るプロセスがすごく刺激的でした。」
さらに、彼女は人生初のハッカソンに参加。これは、24〜48時間以内にチームでプロダクトを開発し、プレゼンを行うイベントだ。
「最初は何をするのか全く分からなかったけど、そこはとても多様でオープンな空間でした。物理学専攻の学生や高校生まで、さまざまなバックグラウンドの人が集まり、一緒にプロダクトを作るんです。」
彼女のチームは自閉症の子供向けの音声認識プロダクトを開発し、この経験を通じてUXデザインの魅力を確信する。
しかし、日本に戻ると、UXデザインはまだ発展途上の分野であることに気づいた。
「『UI/UX 日本』で検索しても、ほとんど情報が出てこなかった。UXの仕事を見つける明確なルートがなかったんです。」
そこで、彼女は自らUXに関するブログや動画を発信し始める。すると、大学や企業、団体から講演依頼が来るようになり、キャリア開発やデザイン思考について語る機会が増えていった。



未来への展望とアドバイス
インターンからリーダーへ──mymizuでの挑戦
日本に帰国後、彼女は引き続きUXデザインのキャリアを模索していた。そんな中、**サステナビリティを推進する社会的インパクトスタートアップ「mymizu」の存在を知る。
ある日、LinkedInでUIデザイナーの募集を見つける。しかし、UIの実務経験がないことを自覚していた彼女は、ただ応募するのではなく、大胆なアプローチを取った。
「UIの経験はないけど、UXならある。カナダでハッカソンやデザイン思考ワークショップを経験した。私を採用するリスクを取ってくれたら、必ず証明してみせる。」
この情熱的なメッセージが評価され、彼女のために特別にUXデザインのインターン枠が設けられることとなった。
インターン期間中、彼女はプロダクトマネージャーのメンターと共に働きながら、プロダクト戦略の基礎、要件定義、成功指標の設定などを学ぶ。
そして次第に、リードデザイナーへと成長。現在ではmymizuのコンサルタントとして、戦略策定やチーム運営を担うまでになった。
この経験を振り返り、彼女は自身の成長を「挑戦を受け入れ、型にはまらない道を選び続けたこと」にあると語る。
「クリエイティブな仕事を目指す人へのアドバイスはシンプルです。
チャンスを待つのではなく、自分で作ること。
条件を満たしていなくても、応募すること。
履歴書だけでなく、動画を作る、プロジェクトを立ち上げるなど、熱意をクリエイティブな方法で伝えること。
そして、常に学べる環境に身を置くことが何よりも大切です。」


彼女のストーリーはまだ続く——
次回は、卒業後のキャリアとUXデザインを超えた影響力について探ります。お楽しみに!

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