【後編】ご縁がつないだキャリア地図──カルティエ、MTV、旅人、そしてノマドリクルーター
恒例となりつつある本インタビューシリーズでは、国や業界の垣根を越えて活躍するプロフェッショナルに焦点を当て、その挑戦と成長の物語をお届けしています。多様な選択肢が広がる時代に、自分らしいキャリアを築くヒントとなれば幸いです。
今回は前回に引き続き、弊社で活躍するリクルーター・Yukinoさんにお話を伺いました。
オランダの大学院留学から、現地ヤマト運輸でのマーケットリサーチ、日本でのカルティエにおけるイベントプランナーの経験を経て、現在は場所に縛られず柔軟に働く「ノマドリクルーター」として活躍されています。多文化・多拠点を行き来する中で磨かれたキャリア観や、自分らしい働き方について語っていただきました。この企画が、読者の皆さまが次の一歩を考えるきっかけとなれば嬉しく思います。
派遣から始まったカルティエでのキャリア
カルティエでの最初の一歩は、派遣社員としての入社でした。その経験から、現職でリクルーターを務める今も、派遣という立場で働く人々に強い共感を抱いているといいます。
「派遣で始まっただけで、“派遣の人”というレッテルを貼られてしまうのが、日本の転職業界にはまだまだある気がします。もし正社員を目指す方がいれば、ぜひサポートしたいと心から思います」と彼女は語ります。
幸運にも彼女は、在籍中にフルタイムの枠が空いたことで、最短ルートで正社員登用を実現しました。その期間はわずか半年ほど。しかし周囲には10年以上も派遣のまま勤めている人が少なくなく、「正社員になれたのは偶然と努力が重なった結果だった」と振り返ります。派遣から正社員へと立場が変わる過程で、“キャリアのラベル”がいかに人を縛るのかを目の当たりにし、それが今のキャリア支援における価値観へと繋がっていきました。

息をつく暇もない、がむしゃらなイベントプランナーの日々
入社後、彼女はイベントプランナーとして約3年半勤めました。最盛期には1年で50本、週1本ペースでイベントを仕掛けるという、まさに息つく暇もない日々。全国にある約35店舗それぞれに対応する必要があり、効率化のためにイベントをある程度パッケージ化しつつ、周年記念などの大規模イベントではゼロから全体を設計しました。
その中でも印象深いのは、銀座ブティックの1周年・2周年イベント。約350名のゲストを迎え、有名DJをキャスティングし、ケータリングや照明演出までを含めて全体をプロデュース。煌びやかで非日常的な空間をつくり上げる責任を担った経験は、彼女の大きな転機となりました。
ただ、彼女自身はもともとラグジュアリーブランドに憧れていたわけではありません。
「ブランドに興味はありましたが、ファンだから入ったわけではなく、偶然のご縁でした。その分、ブランドを一歩引いて、客観的に見られたのかもしれません」と語ります。人がなぜブランドに惹かれるのか、その仕組みを冷静に観察できたことが、企画力の強みになっていきました。
全国を飛び回り、時には遠隔で進行管理をしながら、怒涛の毎日を走り抜けた日々。オランダから帰国したばかりでカルチャーショックもあった時期でしたが、それ以上に「今は働く時期だ!」という覚悟が彼女を突き動かしていました。
「自分の中で“がむしゃらに働く時代”だったと思います。周囲も私らしさを受け止めてくれる人が多くて、思い切り働けました」と、当時を振り返ります。

最後の日に選んだ、特別なイベント
カルティエ時代で最も思い入れのあるイベントは、退職の前日、最後に担当した銀座ブティックでの催しでした。これまで数々のイベントを手がけてきた中でも、彼女が「やりたい」と思うことを存分に形にできた特別な一日。テーマは“シティポップ”。当時のカルティエのブランドイメージとは結びつきにくい発想でしたが、あえて挑戦したバブル期を思わせる華やかなパーティは、彼女自身のクリエイティブな姿勢を体現するものでした。
通常であれば日本の社内で方向性を決めたあと、イベント会社がピッチを行う流れが一般的。しかしこの時は、「こんなイメージでやってみたい」と最初のアイディエーション段階から自ら関わり、イベント会社と一緒にコンセプトを練り上げました。企画の核を自分の想いから出発させられた経験は大きな自信につながりました。彼女にとって、それは単なる仕事ではなく、自身のクリエイティビティを試す場であり、キャリアの節目を象徴するイベントだったのです。

カナダからミャンマーまで、キャリアを離れて考えたこと
カルティエを退職した背景には、「これまで走り続けてきたキャリアを一度立ち止まって見直したい」という思い、そして「旅人になりたい」という強い願望がありました。いわゆる“キャリアブレイク”を選んだのです。
退職後、すぐにカナダへ渡航。その後もベトナム、タイ、ラオス、ミャンマーと旅を重ねていきました。新しい土地での出会いや経験を通じて、自分自身と向き合いながら、「これからの人生をどう歩み、どんなキャリアを築いていくのか」をゆっくり考える時間になったといいます。
そんな旅の途中、耳に入ってきたのが「コロナ」という言葉でした。ラオスを訪れた2020年1月には、アジア人以外の旅行者がマスクを着け始める様子を目にし、「これは大きな出来事になるかもしれない」と直感。そしてミャンマーに滞在していた頃には、世界に広がり始めたパンデミックの現実を間近に感じ、帰国を決断しました。
結果として旅は一時中断されましたが、各地で過ごした日々は、キャリアから距離を置き、「自分の人生をどう生きたいか」と真剣に向き合う、かけがえのない経験となりました。

帰国後に広がった新しい選択肢
パンデミック下で帰国したYukinoさんは、ハローワークの「ウェブデザイナーコース」を受講することにしました。親切なカウンセラーとの対話を通じて「これまでの経験をどう活かせるか」を模索し、人に寄り添い可能性を探す姿勢が、のちにリクルーターの道につながる土台になったと振り返ります。
この選択の背景には、2016年の帰国後から毎年通っていた音楽フェスでの出会いがありました。エンジニアやテック企業で働く人々の姿に触れ、「こういう世界もあるんだ」と新しい可能性を感じたのです。
「今まで話したことのなかったタイプの人たちでしたが、すごく新鮮で、考え方も面白くて。自分にとっては新しい世界でした」
具体的にエンジニアを目指したわけではありませんでしたが、その体験が自然と新しい分野への興味を芽生えさせました。だからこそ帰国後にウェブデザイナーコースを選んだのも、自然な流れだったといいます。PhotoshopやIllustratorに加え少しだけコーディングを学んだ経験は、最初の目的以上に、今のキャリアにつながる大きな一歩となりました。

MTVでのデジタルマーケティング経験
ウェブデザイナーコース卒業後の2020年秋、コロナ禍の真っ只中。先行きの見えない状況の中で、偶然のご縁からMTVに入社することになりました。
「有形の商品ではなく、無形のコンテンツに関わる経験は自分にとって大きな学びになるはずだと思いました。不安な時期ではありましたが、このチャンスを前向きに受け入れました」
入社を決めたのは、これまでのマーケティング経験に加え、ハローワークで学んだPhotoshopなどのデザインスキルを活かせる点に魅力を感じたからでした。ソーシャルメディアを含むデジタル領域にも挑戦できる環境で、新しい分野に飛び込む決意を固めたのです。
グローバル企業でありながら、日本の伝統的な文化を持つ職場は独特で、Yukinoさんにとって新鮮ではあったものの、時に戸惑いもありました。デジタルマーケティングを志望して入社しましたが、バイリンガルである強みを評価され、翻訳や通訳を任される機会が多く、本来やりたかった業務との間にギャップを感じることが少なくありませんでした。
次第に「より直接的にグローバル市場に関わりたい」という気持ちが強まり、2021年春からは新たな挑戦に向けて転職活動を始めることになりました。

Cogsの共同設立者Chris Frostとの出会い
転職活動を続けていた頃、LinkedInで一通のメッセージが届きました。送り主はChris Frost。「一度カジュアルにお話ししませんか?」という一言が、すべての始まりでした。
当時のYukinoさんは、リクルーターという仕事に強い関心を持っていたわけではありません。ただ「フルリモートで働きたい」という希望だけは明確にあり、プロフィールにもその旨を記載していました。だからこそ最初に確認したのは、やはりその点。
“Is this a fully remote role?”
この問いにChrisが即座に “ Yes, it is 👍🏻” と答えた瞬間、「それなら話してみよう」と前向きな気持ちになったと振り返ります。
「最初からリクルーターを目指していたわけではありません。でも当時は“色々なポジションの話を聞いてみよう”とオープンマインドでいたんです。実際に話してみると、会話の中で何度も笑い合えて、“この人とは相性が良さそうだな”と感じました」
その後、日本での共同経営者とも直接会う機会がありました。コロナ禍で制約が多い中でも、採用前に対面の場を設けてくれたこと、その際の細やかな気配りが強く印象に残ったといいます。そして最終的に、Cogsからのオファーを受け取ることになりました。
もちろん、リクルーターという職業を本格的に考えたことはなかったため、迷いもありました。しかし最後に背中を押したのはシンプルな理由でした。
「この人たちとなら楽しく働けそうだ、と心から思えたんです」
そしてこの瞬間、ふと2016年に初めて会ったリクルーターの言葉を思い出しました。
「あなた、リクルーター向いてるかもしれないね」
その時は笑って受け流した一言でしたが、5年の時を経てまさに自分がその道を歩き出そうとしているという伏線回収となったのです。

リクルーターになるまでと、なってから
キャリアチェンジを決めるとき、正直なところ不安もありました。
「もし向いていなかったらどうしよう」
そんな気持ちを抱えたとき、パートナーは「やってみて合わなければまた別の道を探せばいい」とシンプルで前向きな言葉をかけてくれました。さらに妹や長年の友人たちも「人の良いところを見つけて、それを本人に気づかせてあげるのが得意だから、この仕事はきっと合うと思う」と背中を押してくれました。
「その言葉で、“もしかしたら自分に向いているのかもしれない”と思えるようになり、挑戦を決意できました」
実際にリクルーターとして働き始めると、その不安は喜びに変わっていきました。
「これまでも仕事にやりがいを感じてきましたが、Cogsで特に強く感じるのは“チームとして一丸となれる心地よさ”です」
会社のゴールは明確に利益の創出ですが、必ずしも全員が同じ方向を向ける組織ばかりではありません。その中でCogsでは仲間が一つの目標に向かって力を合わせていると日々実感できます。さらに、人の役に立っていると感じられる瞬間が多くあり、それがこの仕事の大きなやりがいにつながっています。

新しい働き方を形づくるライフスタイル
現在は拠点を移しながら働くという選択肢を実際に形にしているYukinoさん。海外ノマドとして活動を始めて以来、自然に囲まれた場所と都会のエネルギーを行き来しながら、自分らしいライフスタイルを築いてきました。
「バリやボルネオの豊かな自然の中で何ヶ月かを過ごした後は、ホーチミンのような活気ある都市で過ごすんです。環境が変わることで生活リズムも働き方も自然と変化して、それが柔軟さや創造性につながっていると感じます」と振り返ります。
そんな日々の中で、先日はシンガポールに立ち寄り、オンラインでやりとりしていた現地オフィスのメンバーと初めて対面しました。
「やっぱり直接会うと距離が縮まりますね」と、笑顔で語ります。
季節ごとの拠点選びも楽しみのひとつ。桜の時期には東京へ戻り、今年の6月はコタキナバルを拠点にAirbnbをベースに仕事をするなど、ノマドライフを謳歌しています。
活動の中心は東南アジア。その理由のひとつが「時差の心地よさ」だといいます。
「日本時間に合わせて働くと、現地では1〜2時間遅れになるんです。その分、午後の時間に余裕ができて集中が続きやすい。気づいたら日本にいるときより仕事がはかどっていることもあります」
もちろん、それは単なる“働きすぎ”ではありません。むしろ効率的に、無理なく働けるペースが自然と作られているという感覚。そして夜遅くに設定されがちな候補者との面談も、現地時間なら無理なく対応できるのも大きなメリットだといいます。

Yukinoが大切にする、リクルーターとしての信念
リクルーターとして活動する中で、Yukinoさんが最も大切にしているのは「中立でいること」です。
「私は自分なりの考えを持っていますが、それが必ずしも他の人に当てはまるとは限りません。だからこそ、事実は事実として伝え、私自身の好みや感情は混ぜないように意識しています」
企業に対する印象は、人によって大きく異なります。
「ある人にとっては“少し合わないかも”と思う環境でも、別の人にとってはむしろ魅力的に映ることがあります。だから私が一方的に評価を決めてしまうのではなく、その人自身の視点を尊重したいんです」
候補者にとって最も大切なのは、自分に合った選択肢に出会えること。そのためにYukinoさんは、常にフラットな立場で向き合う姿勢を貫いています。
Yukinoから見たCogsの魅力
リクルーティング業界にはさまざまなキャリア背景を持つ人がいますが、Cogsには現場経験を積んできた人材が集まっている点が大きな特徴です。
「現場を知っているからこそ、候補者やクライアントに対してリアルな理解を持って接することができます。さらに全員がしっかりとしたバイリンガルであることも大きな強みです。」
Yukinoは、言語と文化は切り離せないものだと考えています。
「英語が話せても、日本語でこそ表現できるパーソナリティがあります。候補者の方も“カルチャーの部分は日本語で話したい”と思う人が多い。そのニーズに対応できるのはCogsの強みです。言語の壁を越えて、文化や価値観まできちんと理解しながらマッチングできるのは大きな価値だと思います。」
ハード面(ポジション理解)に加えて、ソフト面(カルチャーや人柄の理解)まで丁寧に伝えられるのは、他の人材会社にはない強み。
「だからこそ、もっと多くの人にCogsの存在を知ってもらいたい。リクルーティング業界に新しい風を吹き込み、候補者が自分に合うドリームジョブと出会える機会を増やしていきたいんです。」

前編・後編を通して浮かび上がったのは、Yukinoさんが「旅するように働く」姿勢そのものでした。オランダでの留学やヤマト運輸でのマーケットリサーチ、カルティエでの怒涛のイベントプランナー時代、そして自由なライフスタイルと共に築いてきたノマドリクルーターとしての現在まで。直感とご縁を大切にしながら、多文化・多拠点を舞台に経験を重ねてきた歩みは、常に変化を恐れず自分の価値観に正直であったからこそ成し得たものです。ラベルや固定観念に縛られず、自らの強みや興味を軸にキャリアをつないでいく生き方は、読者の皆さまにとっても「自分らしい働き方」を描くための大きなヒントになるのではないでしょうか。
Cogsは、クリエイティブマインドセットを身につけた人材と、グローバルなキャリア成長の機会をつなげるエグゼクティブ・サーチと人材紹介を専門とするエージェンシーです。
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